メガネ大学のブログ

メガネかけてますがアホです。かしこくなりたい。

真の教育者に出会っていた

大学時代の恩師にS先生という方がいる。
僕は、学生時代S先生の講義が苦痛でしょうがなかった。

S先生の授業スタイルは、まず黒板の隅から隅までびっちりと細かい字で板書をする。(たまにイラストも書く)書き終えたら、端から順に板書の説明をしていく。説明が済んだら板書を消して、また隅から隅まで板書をして、説明して…。これをひたすら70分間エンドレスでやり続けるのだ。
ともかく膨大な文字数の文章の黒板をノートに書き写すだけでも大変なのだが、その後の抑揚のない単調なトーンでひたすら説明を続けるS先生の声が眠気を誘う。

こう言っちゃあS先生に失礼だけど、S先生の授業は拷問に近いものがあった。
はっきり言って授業スタイルとしてはあまりにも不器用。テクニックもクソもない。予備校の講師とかでこんな授業をする先生がいたら、速攻でクビになるだろう。
学生時代の僕はS先生に対して、こんな授業をするのは教育者としてどうなのよ?と思っていた。



大学を卒業してそろそろ10年が経とうとしている。社会人となった今、S先生のことをふと思い出した。
今の自分に、S先生のような授業が出来るだろうか?

おそらく無理だ。

あの授業スタイルは、その分野に対する圧倒的な知識量、そして自分の知りうる知識の全てを学生に伝えたい!という一種の狂気じみた情熱がなければ成り立たない。

S先生は純粋に、自分の愛する分野のことを一生懸命学生に伝えようとしていたのだ。

ただ、やり方があまりにも不器用すぎた。
そして僕はS先生の授業を受け止めるには、まだまだ若く未熟だった。



S先生の授業を受けるということは、一つの分野に一生を捧げた一人の人間の生き様を間近で見ることができるという貴重な体験だったのだ。
S先生の偉大さが社会人になった今になって、ようやくわかった気がする。

ただまあ、もう一回あの授業受けろって言われても無理だわ。
手が腱鞘炎になっちゃう。



ちなみに大学のHPにある教授紹介のページ。
S先生の愛読書は「巨人の星」だそうだ。

なるほどなぁ。先生らしいや。